セキュアアーキテクチャ研究室について
私たちは、情報通信・ネットワークを中心として、堅牢性や効率性、また安全性・プライバシ性の高いアーキテクチャ・システム・プロトコルを作り上げるための研究を行っています。特に、基礎的分野では符号理論を元にしたプロトコルの構築、応用的分野では新しいネットワークアーキテクチャやその匿名化・認証プロトコルの研究などを行っています。
研究内容
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情報理論や符号理論の技術を用いた、通信プロトコルや、セキュリティ・プライバシ保護手法の研究。例えば、秘密分散法、private information retrievalなど。理論限界を求め、それを達成するにはどうしたらいいか、などを考えています。
- 強い安全性を有するユニバーサルネットワーク符号化の構成手法と安全性評価の研究 (IEEE Trans. Inf. Theory 2015)
- 線形符号のパラメータと秘密分散法の安全性との関連性を解明する研究 (IEICE Trans. 2013)
- 超高速な秘密分散法のアルゴリズム構成と、その安全性証明手法の研究 (IEICE Trans. 2009)
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情報指向ネットワーク (Information-centric Networking; ICN) における、効率的なプロトコルや新しいセキュリティメカニズムの研究。
- コンテンツの暗号化ベースのアクセス制御を応用した、情報指向ネットワークでの検閲回避方式の構成と評価の研究 (ACM ICN 2016)
- 情報指向ネットワークのリクエストパケットのリスト化によるルータ転送高速化手法の構成、理論的、実装的評価の研究 (IEICE Trans. 2016)
- etc.
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ネットワーク内コンピューティング・エッジコンピューティングなど、新しい計算アーキテクチャにおける数理的フレームワークの研究や、信頼できない計算基盤でのユーザプライバシ保護方法の研究
- 情報検索におけるプライバシ保護プロトコル「Private Information Retrieval」でデータサーバに攻撃者が含まれていた場合に正しく情報が取得できる限界値を解明する研究。(IEICE ComEx 2020 / IEICE Trans. 2021)
- DNSプロトコル匿名化の研究 (Computer Networks 2023, etc.)
- etc.
詳細な研究内容や出版履歴については、Researchmap、栗原のWebサイト、GitHub などを参照して下さい。ある一部のトピックのみを切り出したものですが、研究室紹介資料 (PDF)もご参照下さい。
メンバー
准教授: 栗原 淳 (くりはら じゅん)
[自己紹介]
東京工業大学の修士課程を修了した後、通信事業者の研究開発や技術系企画の業務に従事しました。その後、スタートアップ企業のエンジニアのポジションと、大学教員のポジションを得ています。研究開発からソフトウェアの製品化、通信サービス開発の企画、標準化から教育などの経験をしてきています。現在でも、現役のソフトウェアエンジニアでもあります。
研究開発の領域は、情報通信分野でのセキュリティ要素技術を中心としていますが、セキュリティに留まらず活動しています。要素技術の分野では、情報理論・符号理論を利用した安全な通信プロトコルの開発、その理論限界値の研究がメインです。一方で、社会に適したネットワークアーキテクチャやその機構を考える研究もしています。社会課題を解決するような新しい手法を考え、それを数学的にモデル化して実用に耐えるかどうか検証したり、実際にコーディングしてPoC (Proof-of-Concept; 概念実証)して評価するようなアプローチで研究開発をしています。
[最近の興味]
最近興味があるのは、個人のプライバシや著作権を法制度以外でどうやって守るのか、今の法制度では守ることのできないプライバシや著作権を新たな技術で守れないのか、ということです。
例えば、憲法において「通信の秘密」が守られているのですが、これがあるが故に、日本国では、違法漫画サイトへのアクセスブロッキング (DNSブロッキング) を行うことができず、結果として著作者の権利を守ることもできませんでした。これは今のインターネットの構造 (アーキテクチャ) が過去の郵便と同じような構造になっていることにも起因します。このようなインターネットの構造にまつわる課題は、新たなネットワークで情報が流通される世界になれば「個人のプライバシを侵すことなく」、解決できるのではないかと考えています。そのために、情報指向ネットワークによる情報流通や、情報取得プロトコル (検索やDNSクエリなど) の匿名化の研究を進めています。
上記のような「アーキテクチャの研究」は「思想」に紐づいています。「こういう社会になったら嬉しいな」を技術的に考えること、その有効性を問い、なんらかの形で実証することを行なっています。
他にも、分散計算や、秘匿計算について、それらのアルゴリズムだけではなく「どのノードでどういう計算をさせると安全なのか」というようなシステムアーキテクチャについても興味があります。
リンク
学生
修士課程: 2名